飯森 範親

特別顧問

飯森 範親 いいもり のりちか
指揮者

東京交響楽団正指揮者/日本センチュリー交響楽団首席指揮者/山形交響楽団音楽監督


桐朋学園大学指揮科卒業。ベルリンとミュンヘンで研鑽を積む。
94年から東京交響楽団の専属指揮者、モスクワ放送交響楽団特別客演指揮者、ザ・カレッジオペラハウス管弦楽団常任指揮者、広島交響楽団正指揮者などを歴任。96年の東京交響楽団ヨーロッパツアーでは「今後、イイモリの名が世界で注目されるであろう」と絶賛された。03年、NHK交響楽団定期演奏会でマーラー:交響曲第1番を指揮し、年間ベスト10コンサートに選ばれる。
04年シーズンより山形交響楽団の常任指揮者に着任し、次々と新機軸を打ち出してオーケストラの活動発展と水準の向上に目覚しい成果を挙げている。07年より音楽監督に就任。08年にはアカデミー賞映画「おくりびと」にも出演するなど、「飯森&山響」コンビのエネルギッシュな活動はいま大きな注目を集めている。
オーケストラを革新し、地域活性化に貢献したことから、2010年のビジネス・イノベーション・アワード大賞(主催:日本経営士会)を受賞し、2011年には山形県より齋藤茂吉文化賞を受賞。近年は音楽家としての活動のみならず、こうしたアートマネジメント分野でもその才能を発揮し、日本経営士会名誉会員として活躍の場を広げている。

国内外の多くのオーケストラとの間に築かれた類稀な信頼関係、信頼を裏付ける着実な活動の輪の広がりが高く評価され、05年「渡邉暁雄音楽基金 音楽賞」を受賞。さらに、近現代作品や日本人作品の初演・再演に対する業績により、06年度 芸術選奨文部科学大臣新人賞、06年度 中島健蔵音楽賞を相次いで受賞した。
2012年東京交響楽団との《レスピーギ:交響詩「ローマの松」「ローマの噴水」「ローマの祭り」》はレコード芸術誌特選盤に選ばれた。

現在、山形交響楽団音楽監督、東京交響楽団正指揮者、いずみシンフォニエッタ大阪常任指揮者、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団名誉指揮者、ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者。

2014年シーズンから日本センチュリー交響楽団首席指揮者に就任。
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役員・スタッフインタビュー

【インタビュアー】
まずは、飯森さんご自身についてお聞きしたいと思います。
追浜高校(普通高校の進学校)から桐朋学園の指揮科に入られた頃のお話は当時とても話題になったと聞いています。 散々話されて来たかと思いますが、もう一度この話題に触れさせてください(笑)

【飯森氏】
ピアノは習っていましたが、桐朋学園の主催する「子供のための音楽教室」といった教室で専門的に音楽を学んでいたわけではなかったのです。
従って私のことを知っている先生もいなければ、私が知っている先生もいませんでした。
桐朋の指揮科に「普通高校から初めて入学した学生」として当時周囲の期待は大きかったのですが、ふたを開けてみたらたいした事はなかった(笑)
先輩たちを見ていると明らかに自分が劣っていることがわかり、レッスンを受けても満足できずにいました。レッスンにならない日もありましたよ。
卒業して指揮者になれるのか・・・すごく不安で毎日プレッシャーを感じていました。

【インタビュアー】
本当ですか? ご謙遜はいりませんよ(笑)

【飯森氏】
謙遜なんてしていません。本当の話です。
胃潰瘍にも胃けいれんもなりましたし、学校で吐血もしました(笑)

【インタビュアー】
不安とプレッシャーを抱える中で、どんな勉強をされていたのですか。

【飯森氏】
スコアは嘘をつかないと信じて、200曲を必死で暗譜して少しでも近づこうとしました。
そんな大学生活を送っていた3年生の頃、世界的に名の通ったフランスの指揮者であるジャン・フルネ先生のレッスンを受ける機会が何度かありました。
ジャン・フルネ先生のレッスンの中で「あなたの音楽の感性は素晴らしい。もしかしたらフランス人以上かもしれない。今の勉強を続けなさい」とジャン・フルネ先生に励まされました。
この言葉を頂き、自分の中でもやもやしていたものが完全にふっきれました。
ジャン・フルネ先生とのあの時のレッスンが、私の転機となったんです。

「心のキャッチボール」を心掛ける

【インタビュアー】
さて、一般社団法人 日本弦楽器演奏家協会の話題に触れさせていただきます。特別顧問を引き受けられた理由をお聞かせください。

【飯森氏】
私はオーケストラの指揮者です。オーケストラは様々な楽器がありますが、演奏でなくてはならないのが弦楽器です。本番前のリハーサルではまず弦楽器の傾向を把握して、全体の構成を考えたりするほどです。
この協会が弦楽器の魅力を広くアピールしてゆくといった理念をもって結集した団体であるので、特別顧問を引き受けました。

【インタビュアー】
当協会の理事に第一線で活躍されておられる、高木和弘さん、江口心一さん、扇慎也さん、冨永八峰さんの4人に就任して頂きました。運営面において、忘れてはならない大切なことはなんでしょうか。

【飯森氏】
音楽家は聴いてくださる「お客様」がいて、初めて成り立ちます。
いかに自分が優れていて演奏を聴いてほしいと思っても、お客様がその演奏を受け入れてくれなかったら正直意味がないですね。
演奏曲目はお客様が共感してくれる、またはお客様の共感を頂けるように幅広い選択の中からうまいバランス感覚で決めて欲しいですね。
やりたいから、だけではお客様はついてきてくれません。
会場内でお客様と演奏者たちが「心のキャッチボール」ができると、素晴らしい演奏会になるはずです。
これから演奏会などをメンバーと共に創作していくわけですが「心のキャッチボール」が出来る空間を提供していくことをコンセプトに、演奏レベルだけではない演奏家(プロ)への育成を心掛けて欲しいと思います。

演奏家(プロ)と演奏者(プレイヤー)は刺激し合うべき

【インタビュアー】
演奏家(プロ)と演奏者(プレイヤー)は、クラシック音楽を軸としてどんな関わり方が理想的と思いますか。

【飯森氏】
まず、両者は目的意識が違います。いや、違わなくてはいけないですね。
演奏家(プロ)は、奏でる「音」に大きな責任があります。時には命をかけなくてはならないときもあります。演奏者(プレイヤー)は、生活の基盤が他にあることが多いので、純粋に音楽を楽しんでいただけばよいのですが、実際の演奏となると演奏家であっても演奏者であっても、演奏を評価するのはお客様です。
演奏家の演奏よりも、演奏者の方がやたらと心を打つということがあります。

【インタビュアー】
私、その経験よくあります(笑)

【飯森氏】
私もあります(笑)
ですから我々演奏家は、こうした事実を謙虚に受け入れなくてはいけないし、能力を有する演奏者を無視してはいけないのです。「なぜ演奏者が、お客様から評価される表現ができたのだろうか?」を常に考えなくてはいけない。これは演奏家の基本と思っています。
残念なことに「演奏家」「演奏者」に隔たりをつけているわけではないのでしょうが、優れた表現力のある演奏者の音楽に耳を貸さない演奏家がいることも事実です。
もちろん、演奏者も演奏家に学ぶことは数多くあると思うので、共同の室内楽演奏やオーケストラ演奏を行って、刺激し合うのも価値があります。

未来の演奏家(プロ)へ

【インタビュアー】
未来の演奏家(プロ)を目指して頑張っている、演奏者(プレイヤー)や現役の学生がいます。飯森先生からアドバイスいただけますか?

【飯森氏】
自分のやりたい楽器は極めなくてはならないのは当然ですが、それだけでは駄目だと思います。色々なものに興味を持ち、音楽以外のものと接する経験も、演奏家(プロ)にとって大切なことだと思います。音楽以外の経験は自分の演奏だったり、人間形成にも必ず影響を与えてくれるはずです。

【インタビュアー】
お忙しい中にインタビューのお時間を頂きありがとうございました。
健康に留意され、ますますのご活躍を願っております。


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